稲村ヶ崎の「TARO’S」に触れた翌日に行ってみると、その通りの情景があった。休日の昼下がりには、立派なバイクに乗ってライダーが集まってくる。
が、右側でグラスを手にして立っている紳士はライダーではない。走っている途中に、散歩している紳士とよくすれ違う。まだ言葉を交わしたことはないが、何年にもわたるので、お互いに顔見知り、と認め合っていると思う。柔和な顔を引き締め、杖を頼りに義足の右足を大きく振り、大きな体を揺すってものすごい勢いで由比ヶ浜の方向から江の島に向かって歩いている。散歩というよりは、競歩のような毅然とした歩きっぷりだ。
多分、イギリス人ではないかと思っていた。黒ビールのグラスを抱えているところをみると、やはりそうかも知れない。
この日も、この写真の直前にすれ違った。「TARO’S」の前にいた彼に手を振り、シャッターを押した。
(shot:05/05/07)