鎌倉は、山と山の間の小さな谷が多い土地だ。その谷は谷戸であり、ヤトとかヤツと呼ばれている。土地の言葉ではヤツ。扇ヶ谷(オオギガヤツ)とか、佐助ヶ谷(サスケガヤツ)とか、言い慣わしている。
そのヤツに沿って古くからある家が、鎌倉の気配を色濃く残している。谷戸の道を歩くことは楽しい。テーマパークのようになりつつある鎌倉でも、ここには古くから鎌倉に住む人の、東京の下町の根津にあるような、香気の漂う生活がある。決して、ガイドブックにも、hanakoにも、サライにもない、鎌倉にしかない鎌倉の生活の景色が見える。
例えば紫陽花。谷戸の民家の庭にある紫陽花は、いききとして香気がある。もともと谷戸の日陰に適した紫陽花が、その自然な生命力と美しい姿を、自然な表情で見せてくれている。鎌倉で最も美しい紫陽花だと思う。
日曜日の午後、久し振りに谷戸道を走った。
(shot:05/06/26 CANON EOS Kiss Digital N)